デニムを直す時間に、人生の折り返しを思う。静かな午後の記録です。

穴だらけのジーパンを直してもらった。
ただそれだけなのに、不思議と人生の歩みまで重なって見える。

気づけば、直して履き続けている

ジーパンを買った記憶は、人生で数えるほどしかありません。
それでも今、手元には6本のジーパンがあります。

穴が空いたり、生地が擦り切れたりしても、捨てることなく直して履いてきました。
気づけばそれが、自分の当たり前になっています。

近所に、かつて縫製の仕事をしていた80歳くらいの方がいます。
お願いすると、家にある工業用ミシンで直してくれるんです。普段は1本500円。

この前3本まとめて出したときは2,000円でした。
「まとめてだから」ではなく、そのうちの1本がポケットや膝までボロボロで、直す箇所が多かったから。
理由を聞けば納得ですし、むしろ丁寧に仕上げてもらえてその値段ならありがたいと感じました。

仕上がりは想像以上にきれいで、リペアの跡がむしろ味わいになっていました。

ガンになって体重が落ち、10代の頃のジーパンまで履けるようになりました。
不思議な気持ちでした。

膝やポケットはボロボロ。普通なら処分してしまうはずのものです。
けれど、直してでも履きたいと思ったのは、そこに「過ごしてきた時間」が刻まれているから。

リペアの縫い跡は傷のようであり、同時に再生の証のようにも見えます。

休日、天竜川のほとり、浜名大橋の下でコーヒーを飲みながら過ごしました。
リペアしてもらったジーパンを履いて、ただ川の音を聞いている時間。

膝を曲げると、直してもらった跡がよく見える。
その跡を見ていると、誇らしいような、不思議に落ち着く気持ちになりました。

病気になってから、一人で考える時間が増えました。
これまで「強くなければ」と思い、わがままに突き進んできたけれど、病気はそれをあっさり打ち砕きました。

「病気は一人では勝てない」
それを思い知ったのです。

直したジーパンを眺めながら、人生もまた修復を繰り返しているのだと思いました。
支えてくれる人がいて、ようやく歩き続けられる。
リペアの跡は、そのことを教えてくれているようでした。

やがて雨が降り出したので、車に戻りました。
フロントガラスに落ちる雨粒を見ながら、今日撮った写真を見返します。

コーヒーと、リペアの跡。
そして川の景色。

なんでもない時間だけれど、そこに確かに自分の物語があります。
また明日も、このジーパンを履いて歩いていこう。